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今年の酷暑とも呼べる日差しは、一応の落ち着きを見せ始めたが、昼夜問わず異様な夏だった。
昨今のエコブームで、家電メーカー各社が太陽光等の自家発電を推奨している現状を見て食傷気味である。
一時の温水器ブームにも似た、売れ線の高利益に群がる業界の構造が伺える。
屋根材もまた然りで、新しい材として鋼板メーカー各社が、あの手この手で特色立てた金属屋根の普及に凌ぎを削っている。
古い物を処分し、新しい物に差し替える事を推し進める各業界のスタイルは、この先の暮らしに果たして必要な行為なのだろうか。
物を大切に、という先人の教えやそれに附する知恵を使い、資源のない我が国こその方法でエコロジーを提案する事が、新しい産業や発展に繋がる道であろう。
これから先の10年で、愛着のある物を再利用したいときに、上手に活用できる技術や職人が無くならない事を願うばかりである。
物作りに於いて大切な事は、現状を把握しそれ以上の物を構築するということだ。
我々の工事においては、新規で物を建造する作業と、既存の建物を再構築する作業の二点がある。
新規に建物を建築する場合に於いては、建築士の創造に摺り合せた提案を行うのだが、既に建設済みの建物に提案する場合は、住人の思いを最大限に汲み取る事にしている。
既に日常の生活の一部となっている思い入れのある住環境を破壊することなく、これからの建物が自然の一部となりつつ新しい技術を持って、より快適な環境になる事を提案する事は、職人としての厳しくも楽しい時間なのである。
古い建物を活用し、現代に耐えうる意匠と技術で再構築することは、これからの社会に於いてエネルギーを無駄なく消費・利用するためのエッセンスであると思う。
昨今、機械的な生産物よりも一品モノや限定品、果ては数千万の限定車がものの数分で売り切れてしまう時代である。消費者の嗜好は、物の普及と共に大量生産の商品よりも自分の嗜好に即した物に興味が向くようになった。
本物志向を求める半面、価格に対してもシビアな経済情勢でもある今日の社会では、より本質的で価格以上の価値を感じられる物が人々の関心を集めるものなのだろう。
我々の仕事は、一度お客様とお仕事をさせて頂ければ、次にお仕事でお逢いするまでの期間はかなりの年数を要する。その期間がどれも一定であるという事、それは、ひとつの作品の完成度が充分であった証である。物を購入するにあたっての重要な要素である「価格」は大切な基準だ。しかしながら、職人仕事では、購入時の価格には共感頂けないことが多分にあると思う。
我々職人は、お客様が工事を振り返った際に納得頂ける、価格に見合った工事だと言って頂ける作品を作り続けて絶やさない事が、お客様の利益に繋がると信じている。
そして、使用することで価値を感じられるような物づくりをこれからも続けていけるよう、己自身を磨き続けている。
建物にとって常に酷使される場所にある屋根は、建物の寿命にも繋がる生命線なので、慎重な選択が必要だ。
屋根は大工職人と並び、建物の根幹を支える重要な場所であるため、国家資格がそれぞれに有するほどの技術が要される。また建物と独立して工事を請け負うこともある、特殊な職でもある。
屋根職人は住まいの快適性や美観、価格について様々な知識を有している。それが自身の利益のみを求め、工事が疎かになっても、お客様や工事業者の言うがままであってもならない。
昨今は、全ての利益がそれぞれの利益になるような選択が増え、そのことが消費者の知識を高める要因でもある。
我々に限らず、プロたる者、相手の利益が自身の利益へ還元されるような先人の道に従い、今こそ正しい道へ還ることが信頼を勝ち得る道へ通ずると思っている。